低身長外来

低身長とは

低身長とは、同性・同年齢・同月生まれの子どもを身長順に100人並べたとき、前から2〜3番目に入る程度の身長を指します。医学的には、成長曲線で「マイナス2.0SD(標準偏差)以下」に該当する場合を低身長と定義しています。また、身長自体がマイナス2.0SD以下でなくても、1年間の身長の伸びが標準よりも著しく遅い場合も低身長と判断されることがあります。

低身長だからといって必ずしも病気とは限りません。多くはお子様の個性による体質的なものです。しかし一部には、成長ホルモンの分泌不全や甲状腺の異常、染色体・骨の病気が原因のこともあるため、気になる場合は早めに専門医へ相談することが大切です。

低身長の治療

低身長の治療は、原因となる疾患によって異なります。まずは血液検査や尿検査、手のレントゲン撮影による骨年齢の測定などを行い、低身長の原因を特定することから始まります。代表的な治療法として、成長ホルモンの分泌が不足している「成長ホルモン分泌不全性低身長症」では、毎晩成長ホルモンを注射する治療が有効です。また、甲状腺機能低下症が原因の場合は、内服薬による治療で改善が期待できます。

ただし、骨が成長する時期を過ぎてしまうと身長を伸ばすことは困難になるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。特に小学校入学前までに治療を開始できれば、より高い効果が得られると言われています。お子様の身長や成長の伸びが気になる場合は、できるだけ早く専門医へ相談しましょう。

低身長の原因

低身長の原因は多岐にわたりますが、大きく分けると病気とは考えにくい体質的なものと、治療が必要な疾患によるものがあります。

病気とは考えにくいケースでは、両親からの遺伝による家族性のものや、原因が特定できない体質的なものが大半を占めます。一方、治療が必要な疾患としては、成長ホルモンや甲状腺ホルモンの分泌不全、ターナー症候群などの染色体異常、小さく生まれたことによるSGA性低身長(在胎週数に比べて出生時の身長・体重が小さく、2歳までに追いつかなかったもの)などが挙げられます。

また、心臓や腎臓などの主要臓器の病気、愛情遮断症候群のような心理社会的要因、栄養不足なども低身長の原因となることがあります。検査によって隠れている重要な病気が見つかる場合もあるため、早めの受診が大切です。

低身長の診断

初診時には血液検査で成長ホルモンや甲状腺ホルモンの分泌状態、主要臓器の異常の有無を調べます。同時に尿検査や手首のレントゲン撮影を実施し、骨年齢(骨の発育の度合い)を測定することで、今後の成長の可能性を評価します。

初診の結果、極度の低身長や成長率の著しい低下が認められた場合は、さらに精密検査へ進みます。具体的には、成長ホルモン分泌刺激試験で脳下垂体からのホルモン分泌を詳しく調べたり、脳腫瘍や脳下垂体異常が疑われる際には頭部MRI検査を行います。

これらの検査結果を総合的に判断することで、低身長の原因を特定し、適切な治療方針を決定していきます。

検査の流れ

低身長外来では、初診で問診や各種検査を実施し、2回目の受診で結果を総合的に判断します。診断内容によって経過観察か精密検査へ進むか決定します。

下記の3つをダウンロードして記入してください。

初診

1. 問診・診察

初診では問診から始まり、出生時の身長・体重や在胎週数、これまでの成長記録を確認します。食事内容や生活習慣、病歴についても詳しく聞き取りを行います。

2. 検査

身体計測で現在の身長・体重を測定し、母子手帳の記録から成長曲線を作成して平均値との差を把握します。血液検査では心臓や腎臓、肝臓などの臓器機能をチェックし、成長ホルモンや甲状腺ホルモンの分泌量を調べます。尿検査で腎機能の状態も確認します。

3. レントゲン

手首のレントゲン撮影では骨端線(骨の成長部分)の開き具合から骨年齢を測定します。骨年齢が実年齢より若いほど今後の成長が期待できるため、治療方針を決める重要な指標となります。

2回目の外来

1. 経過観察

2回目の受診では初診時の検査結果をもとに総合的な判断を行います。低身長以外に異常が見られない場合は体質的・家族性のものと考えられ、治療は行わず年1回の定期受診で成長を見守ります。

2. 検査

極度の低身長や成長率の著しい低下が認められる場合は精密検査が必要です。骨年齢が実年齢より大幅に若い、IGF-1(成長ホルモンの刺激で分泌される成長因子)が低いといった所見があれば、成長ホルモン分泌刺激試験を実施します。この検査では内服薬で脳下垂体を刺激し、一定時間ごとに採血して成長ホルモンの分泌量を測定します。
脳下垂体の異常や脳腫瘍が疑われる場合は頭部MRI検査も行い、治療の必要性を慎重に判断していきます。

低身長に関するよくある質問

Q. 成長ホルモン治療はいつ始めるのが理想的ですか?

できるだけ早期に始めることが推奨されており、小学校入学前が理想です。早ければ3歳頃から治療を開始するケースもあります。

Q. 注射は痛くないですか?

非常に細く短い針を使用するため、それほど痛みは感じません。3〜4歳のお子様でも問題なく治療を受けています。

Q. 成長ホルモン治療はいつまで続けますか?

骨端線(骨が伸びる部分)が閉じて大人の骨になるまで継続します。レントゲン検査で骨の成長が止まったことが確認されると治療終了となります。

Q. 背を伸ばすサプリメントは効果がありますか?

残念ながら、直接背を伸ばす効果のあるサプリメントは存在しません。規則正しい生活、バランスの良い食事、十分な睡眠を心がけることが大切です。